インタビュー

事業立ち上げのプロが語る「大企業で新規事業」の難しさと、そのハードルを越えるための秘策

GOB-IP 代表山口氏と橋本氏

起業家のことをアントレプレナーと呼びますが、大企業の中で事業を起こす人のことは「イントレプレナー」と呼びます。

大企業にはヒト・モノ・カネ・情報のリソースが豊富にある反面、新規事業の立ち上げにおけるハードルが高かったり、事業を育てていく過程が難しかったりすると言います。

 

起業家を支援するインキュベーターであるGOB Incubation Partners株式会社(以下、GOB-IP)では、事業立ち上げのノウハウを活かし、大企業を対象とした新規事業立ち上げのコンサルティングも提供しています。

メンター自身が事業立ち上げ経験者という実績に裏付けされた、質の高いコンサルティングを提供している同社ですが、イントレプレナー達にビジネスプランのテンプレートを提供するという取り組みを新たに始めています。

外部サイト:GOB Incubation Partners株式会社

 

今回はCo-Founder/代表取締役 山口 高弘氏(以下、山口)と、同社で働きながら自身も起業家として活躍する橋本咲子氏(以下、橋本)に、大企業内で新規事業を立ち上げる難しさと、ビジネスプランテンプレートの有用性についてのお話を伺いました

 

GOB-IP 代表山口氏と橋本氏
Co-Founder/代表取締役 山口 高弘氏(写真右)と、橋本咲子氏(写真左

 

起業家を育て、「カイシャを作る」会社

 

— まずはGOB-IPの事業内容について教えてください。

 

山口:

GOB-IPでは、「社会課題の解決」と「持続可能性」を両立したビジネスを生み出す起業家を育てて輩出しています。

日本には「社会課題を解決したい」という公益的な考えのもと、公務員を目指す人は多いのですが、社会課題解決とビジネスをつなげて考えられるアントレプレナーを育てる環境が整っていません。

社会課題は様々であり無数かつ多数存在します。それゆえに、解決策も多面的に提供される必要があります。しかし、例えば公益性のある仕事でも、公務員はあくまで公的サービスなので、誰かのためだけにサービスを作るということはやりづらく、選択肢は一本化されがちです。つまり、社会解決には、課題解決の選択肢が重要なのにもかかわらず、それが実現できないことも多いのです。

そこで、そのような人に対して、ビジネスで社会課題が解決できるということから教えて、それを解決するソリューションが見つかるまでを支援しています。

 

— 独立した起業家だけではなく、大企業の新規事業も支援されてるんですよね?

 

山口:

はい、イノベーションプログラムのような、大企業内の新規事業開発や企業内起業家(イントレプレナー)に対しても支援を行っています。

大企業の新規事業と言えば、10年ほど前までは本業から逸れることは殆ど有りませんでした。それがここ何年かは、コアビジネスの周辺に限定すると新しい事業の柱が中々生まれないということで、社内の個人から提案される幅広いアイデアを新規事業として検討する企業が増えてきています。

私達もビジネスコンテストなどで大企業内の起業家(=イントレプレナー)を見てきましたが、独立した起業家も、大企業の中にいるイントレプレナーも、社会課題を解決したいという想いは同じだということに気づきました。それであれば、企業の中にいながら社会課題を解決しようとしている人達も支援すべきだと考え、数年前から大企業向けの事業開発コンサルティングを始めました。

 

大企業での新規事業立ち上げハードルは「ノウハウと審査基準」

 

— 大企業での新規事業立ち上げにおける難しい点は、どんなところでしょうか?

 

山口:

1つは事業立ち上げのプロセスがわかっていて、コーチングできる人材が少ないという点です。

大企業に勤める人は当然ながら既にある程度完成された事業が存在するところからスタートするため、いくら優秀だからと言っても事業をゼロから立ち上げる経験は積みにくい。そのため、事業の立ち上げに必要な課題の検証であったり、PSF(Problem Solution Fit)、ビジネスモデルの構築・実証などを社内で実行したり次の段階に移行するための判断をするのが難しい状況になっています。

 

— そこをGOB-IPで支援されているということですね。

 

山口:

そうですね。新規事業立ち上げ経験があるから偉いということでは当然ないのですが、役割や経験の違いがある。このため、新規事業立ち上げに関するアドバイスは実際に事業を立ち上げた経験のある人でなければ解像度高く支援することはできないので、そこを支援しています。

具体的には、

  • 事業を作るプロセスの解像度を上げ、伴走する
  • 実証してきた結果をまとめるビジネスプランを作るコーチングもする

の両方を提供しています。

 

— 他にもハードルとなることはあるのでしょうか?

 

山口:

2つ目のハードルは、適正なレベルの審査基準で新規事業への投資判断をするのが難しい点です。

エンジェル投資家やベンチャーキャピタルは企業の成長フェーズに応じて見るべきポイントと、超えているべきハードルの基準を持っていますが、大企業内にはそれを評価する仕組みが確立されていません。そのため、独立スタートアップでいうところのエンジェルラウンド(ビジネスモデルの重要な点を検証する段階)にもかかわらず、完璧に実証された精微なビジネスプランを求めてしまうケースが多いのです。このことは、通常は完成された事業を管理するため、その解像度でそのかなり手前の段階のビジネスプランを評価することになりがちということを示しています。

 

大企業内の新規事業でも、通常のスタートアップが見ている基準を企業も共有すべきだと考えていますが、言葉で伝えるだけでは適切な審査基準を大きな企業が持つことは難しいです。そこで、最終審査のベースとなるフォーマットを作ることで、審査基準とそのための証拠書類を標準化できればと思ったのが、ビジネスプランのテンプレートを作ることにした理由の1つです。

 

— もう1つの目的は何だったのでしょうか?

 

山口:

もう1つの目的は、プレゼンテーションが原因で本来は審査を通過すべき事業が通らないという状況を避けることです。

大企業内で初めて新規事業に取り組む方たちは、ゼロからビジネスプランを書いたことが無い人が多いです。フォーマットがあればそれを埋めていくことはできますが、いきなりフリーフォーマットでビジネスプランの資料を作るのは難しいわけです。

そこで、必要な要素が網羅されているビジネスプランのフォーマットを“先生”にして、ビジネスプラン作成の経験値が浅いことに起因する非通過を無くすために、今回の取り組みを実施しました。

 

橋本:

私も事業をしているのでわかるのですが、初めてゼロからビジネスプランを作る場合、自分がどの地点にいて、どの事実、データを集め、どうアウトプットしたら良いのかなどの全体感が理解しづらいんです。加えて、大企業内の優秀な人は左脳でロジカルに考えるタイプが多いので、その強みを活かせるよう、全体のストーリー構築に必要なパーツを論理的に整理・集約したフォーマットがあることが重要であると思っています。

 

山口:

また、テンプレートがあれば、資料のクオリティによるバイアスが無くなり、本質的なビジネスの内容だけでapple to apple(=同じ基準で公平)に比較・審査できることもメリットだと考えています。

 

GOB-IP Co-founder/代表取締役 山口氏

 

— テンプレート作成を自社ではなく、外部に委託した理由は何だったのでしょうか?

 

山口:

ビジネスプランはビジュアルとロジック、両方を満たしたものである必要があると思っていますが、それを自分達だけで作るのは難しいと判断したためです。自分達だけで作ると、どうしてもデザインの部分が難しく、情報量、つまり文字が多い資料になってしまうのです。

 

— 資料作成サービスは他にもあると思いますが、「KUROKO」を選ばれた決め手は何だったのでしょうか?

 

山口:

決めた理由はデザインレベルが高いことはもちろん、シリーズAやシリーズBのベンチャー企業、及びメガベンチャーを含む大手企業との実績があり、マーケットの常識を知っているところですね。

今回のフォーマットは実際にベンチャー企業が資金調達をする時に資料に入れておくべき要素、見せ方、ストーリーの組み立て方などを反映させる必要があったので、そのあたりのナレッジがあることが重要なポイントになりました。

 

ビジネスプランテンプレートの目次(サンプル)目次のサンプル

 

ビジネスプランテンプレートへの投資はROIが高い

 

— テンプレートの効果は満足のいくものでしたか?

 

山口:

全体的にとても満足しています。

100万円を超える金額でしたが、極めてROI(投資対リターン)の高い投資だったと思っています。

 

ビジネスプランテンプレートを導入する前は、テンプレートがあると起業家がどんな内容を盛り込むべきか考える必要が無くなり、思考停止になってしまうのではないか?という懸念がありました。

ですが実際に導入してみるとそんなことは全く無く、むしろ資料に入れるべき内容を一つ一つ教えるよりも、実際にテンプレートを見て学んでもらう方が圧倒的に速かったと感じています。

 

— 実際に納品された資料の品質はどうでしたか?

 

山口:

資料に入れる要素・見せ方・ストーリーの組み立て方に関しては、引き算が上手いと感じました。

テンプレートによって資料に入れられる情報量が制限されているので、それが良い制約になって、実際に事業担当の方が作成されたビジネスプランの資料もシンプルに仕上がっていました。

また、こちらから指定した必要な項目は資料内に網羅しつつ、本編ではなくAppendix(参考資料)として入れたり、1ページにまとめるエグゼクティブサマリでは重要な項目だけ選定して入れたり、シンプルになるように工夫していただいたので助かりましたね。

 

ビジネスプランのテンプレートなので補足説明も入れていただきましたが、多すぎず、少なすぎず、必要十分なボリュームでした。サンプルスライドも入れていただけたので、完成形のイメージを持って作成に取り組むことができたと思います。

 

ビジネスプランテンプレートのエグゼクティブサマリ(サンプル)エグゼクティブサマリ(都合により一部修正有り)

 

— 資料が完成するまでのやり取りは問題ありませんでしたか?

 

橋本:

やり取りの対応スピードには感動しました。

返信も早く、追加でお願いしたこともすぐに対応していただけましたね。

 

山口:

KUROKOさんは今までもベンチャー企業の資金調達などを担当してきているとのことなので、ビジネスプランの資料が意思決定の最終工程になるのをよく理解していらっしゃるのだと思いました。レスも早かったですし、納品物の期日に関しても前倒しで頂けたので、すごいと思いましたね。

 

テンプレート「だけ」では不十分

 

— 「KUROKO」のサービスを他の人にも勧めたいと思われますか?

 

山口:

はい、是非勧めたいです。まず当然ながら起業家には相性が良いと思いますね。

 

橋本:

特に資金調達など、プレゼン資料が良くなることで調達金額が変わるのであれば、投資としては安いと感じます。

 

山口:

あとは今回のように新規事業を開発している大企業にも合うと思いますが、大企業の場合は時間軸が大事だと思っています。

本業が成熟傾向にあって、フロンティアを開拓する必要がある企業。それでいて、新規事業の開発を3年程度やって取り組みが加速してきている企業が特にフィットすると思います。

 

また、ビジネスプランテンプレート単体だと、担当者だけで使いこなすのは難しいかもしれません。中身についてフィードバックなどができるコーチがいる方が、テンプレートが活かせるのではないかと思います。

 

さいごに

ビジネスプランのテンプレートと言う形でフォーマットを制作するのはKUROKOとしても初めての取り組みでしたが、満足いただけて私達としても嬉しい限りです。

KUROKOでは通常、プレゼン資料を完成の状態に仕上げるまでをお手伝いをすることが多いのですが、今後も今回のような新しいニーズにも柔軟に対応していきたいと思います。

 

資料作成に関するご相談、お問い合わせはお問い合わせフォームから受け付けています。

 

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